麗雪神話~理の鍵人~
シルフェが息を呑むのがわかる。

困惑した表情からは、焦りはあっても、あまり驚愕の色は見られない。

そうだ、シルフェはきっと、うすうす勘付いていたに違いない。ボリスの気持ちに。それでもその想いから目をそむけようとしていたのは、サラマスを愛していたから…。

そんなことわかっている。

それでも、伝えなければ何も始まらない。

うやむやのまま、諦めたくはないから。

「ボリス、でも私は、私は神で……」

シルフェがやっとのことで押し出した台詞がばかばかしくて、ボリスはふっと鼻で笑った。

「そんなこと関係ない。
俺がお前を守る。
そばにいたいんだ」

「………ボリス。ごめ」

「――いやだ」

シルフェの謝罪の言葉を、ボリスは遮った。

彼女の拒絶を、はねのけたかった。

それくらい想いが強いのだということを、知ってほしかった。
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