麗雪神話~理の鍵人~
「お前たちがちょっとでも動けば、この娘は死ぬよ?
あっはっはっ!」

心底から楽しそうなヴェインの笑い声に、ディセル達はその場でぎり、と歯ぎしりする。

セレイアは緊張した。

(この一騎打ち、勝たなければ終わり!)

ヴェインの指示ひとつで、すべての矢がセレイアに向けて放たれるだろう。そうしてセレイアを葬った後、彼らが仲間たちに手を出さないはずがない。

自分がここで、ヴェインを葬り去る。

それしかない。

緊迫の中、戦いの火ぶたは切って落とされた。

最初に動いたのは、セレイアだった。

気持ちに余裕のないせいかも知れない。いつものセレイアより、少し攻め急いだ感のある、力任せの一撃だった。

ぶん、と唸りをあげて襲い来るセレイアの一撃を、ヴェインは槍で受けずにさっとかわした。

そしてセレイアが次の攻撃に移る前のわずかな隙を狙って、ヴェインの槍がねじ込まれた。

「…!!」

セレイアは間一髪、すれすれのところでその一撃をかわした。

再び間合いをとり、対峙する。

セレイアは早くも緊張で手に汗をかいていたため、すべらないよう槍をぎゅっと握りなおす。

背後では固唾を呑んで見守っている仲間たちの気配。

(―――…負けられない!)

けれどそう思えば思うほど、セレイアの攻撃は焦ったものとなってしまい、ヴェインにちっとも当たらない。
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