麗雪神話~理の鍵人~
セレイアは、とりあえず立ち上がり、道を探した。

こんなところに長居はしたくない。

幸い川の流れに沿って、細く人一人が通れるくらいの岩場の道があった。セレイアはもう一度理の塔を見上げ、だいたいの位置を確認し、そちらに向かって歩を進めることにする。

歩き出すと、さすがに体がふらついたが、なんとかなりそうだった。

仲間たちは、セレイアが死んだと思っているだろう。

(ディセル、心配しているわよね…)

自分まで命を失ったような、そんな顔をしているに違いない。がむしゃらにセレイアを追い崖から落ちようとして、サラマスたちに止められる姿が目に浮かぶ。

一刻も早く、元気な姿を見せたい。

その気持ちだけで、セレイアは歩を進めた。

しかし、上に登る道はなかなか見つからなかった。

このままでは食事もなく、さまよった挙句野垂れ死んでしまうかも―そんな最悪の想像が脳裏をよぎった時だった。

懐かしい声が耳を打ったのは。
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