麗雪神話~理の鍵人~
「あいつ…! 生きていやがったのか…!」

足を引きずりながら現れたのは、ヴェインだった。

まさか彼も助かっていたとは。

しかし見たところ、彼はセレイア程には運が良くなかったようだ。

体中に裂傷をつくり、足を引きずる様子は、見ていて痛々しかった。

「…そこに、誰かいるのか」

荒い息の合間に、絞り出すようにヴェインが誰何の声をあげる。

セレイアは出て行っていいものか迷った。

迷う自分に驚く。

満身創痍のヴェイン、倒すなら今しかないと思う。

ヴェインには武器もなく、戦う術を持たないように見える。

普段の彼は強敵だ。

彼が本調子を取り戻す前に、やっつけておくべきなのだ。

(…………)

けれど、セレイアにはどうしてもその決断ができなかった。

とりあえず、かくれんぼをしていても仕方がない。

セレイアは意を決してテントの影から姿を現した。

「…私よ」
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