麗雪神話~理の鍵人~
ヴェインは少なからず驚いたようだった。
普段は見られないような、動揺した表情にそれが表れている。
しかし彼の動揺は一瞬だった。
セレイアの手に武器が握られているのを見て、ふっと諦めたように笑う。
「…君か。ふ、殺せ」
「…え?」
「ここでは僕の力も使えない。武器がないんだよ。さっさと殺せ。僕は君の敵だ」
そう言う声も、絶え絶えだった。
セレイアはしばし考え―――
長い、長いため息をついた。
「…殺さないわ」
決然と言い放つと、素っ頓狂な声がすぐそばからあがった。
「はぁ!? セレイア、どういうことだよ!
こいつは敵だぞ! 今が絶好のチャンスじゃないか!」
ポックの言うこともすごくよくわかるのだが、何かが納得できないのだ。
それはセレイアの持つ武士の誇り―武士道のようなものかも知れない。
怪我をして、丸腰の相手を、殺すことなどできない。
たとえ相手がいずれ殺し合うことになる宿敵でも。
心がそう告げている。
普段は見られないような、動揺した表情にそれが表れている。
しかし彼の動揺は一瞬だった。
セレイアの手に武器が握られているのを見て、ふっと諦めたように笑う。
「…君か。ふ、殺せ」
「…え?」
「ここでは僕の力も使えない。武器がないんだよ。さっさと殺せ。僕は君の敵だ」
そう言う声も、絶え絶えだった。
セレイアはしばし考え―――
長い、長いため息をついた。
「…殺さないわ」
決然と言い放つと、素っ頓狂な声がすぐそばからあがった。
「はぁ!? セレイア、どういうことだよ!
こいつは敵だぞ! 今が絶好のチャンスじゃないか!」
ポックの言うこともすごくよくわかるのだが、何かが納得できないのだ。
それはセレイアの持つ武士の誇り―武士道のようなものかも知れない。
怪我をして、丸腰の相手を、殺すことなどできない。
たとえ相手がいずれ殺し合うことになる宿敵でも。
心がそう告げている。