イケメン王子先輩と私。
文化祭。
そして文化祭。私はメイドの衣装に着替えた。
「奏ー、どうかなぁ? 変じゃない?」
「おーっ、似合うじゃん! あっ、コレつけてみて?」
そういって渡してきたのは猫耳カチューシャ。こんなのつけるの……?
「あっ、可愛いー!! それで『お帰りなさいませ、ご主人様にゃん』っていったらいいと思う!」
「えっ……」
「ほら雫、始まったよ! 頑張ってね〜!!」
そういって奏は私の背中を押して、手を振った。私はメイドで奏は料理担当。私、ちゃんと仕事できるかな……。そんなことを考えていると、早速お客さんがきた。
「おっ、お帰りなさいませ、ご主人様っ」
はぁ……やっぱり緊張するな……。そして私は『お帰りなさいませ、ご主人様』を連呼していた。……や、休みたい。
「お帰りなさいませ、ご主……あっ」
「よぅ。元気そうだな」
「霰……!! きてくれたんだ!? ……じゃなくて、こちらの席にどうぞ! ご注文はいかが致しましょうか?」
「んー、じゃあオムライスで」
「かしこまりました! 少々お待ち下さいませ、にゃんっ……」
恥ずかしい……。私は注文を奏達に頼み、他のお客さんの所にもいって注文を聞いたり水を持っていったりした。すると、奏が手招きして私を呼んでいた。
「雫、はいこれ」
「? ……オムライス?」
「……王子に、ね♪」
「!! わ、わかってるってば……!!」
そういって私は霰の注文したオムライスを届けにいった。
「お待たせしました、ご主人様。オムライスでございます」
「ん。ありがとよ。……お前はあれ、しねぇの?」
「え?」
霰が指をさしている方を見てみると。
「ご主人様、あーん♪」
「あーんっ」
え……。なんかあの子めっちゃノリノリなんだけど。
「しねぇの? 雫」
「あれをやれというの……?」
「あぁ、そうだけど」
……しょうがない、断りたいけど今は仕事中だもんね……。
「ご主人様っ、あーん……」
「あーん。……うまいな」
霰はそういってニコッと笑った。やばい、元気出てきたかも。
「ありがとうございます、嬉しいにゃん!」
でもやっぱり、恥ずかしい。そう思いながら私もニコッと笑った。霰は私を見て固まっていた。……引かれた……?
「……お前、可愛いすぎてムカつく……」
!!霰は耳まで赤く染めてそういった。照れてる……?
「いってらっしゃいませ、ご主人様!」
「またな、雫。あー、そうそう……」
「? ……霰?」
「さっきのヤツ、俺以外の人にするんじゃねぇぞ」
「!! ……わ、わかってる」
霰はそういって私の頬にキスをして帰っていった。……ドキドキが治まらない……。数分後、後半の人が仕事をすることになった。奏と一緒にまわろうと思って厨房にいくと、もう外に出たらしく、いなかった。校内を歩いていると。
「「王子〜! キャーッ、カッコいいー!!」」
『王子』……!!霰の事、だよね。私は声がする方へと走った。すると、そこには沢山の女性に囲まれている霰がいた。
「雫! きてくれたんだな。ちょっと今、大変な事に、なってて……。とりあ、えず入ってろっ……」
「う、うん……」
「いやー、霰のおかげで店が大繁盛だね♪ ん? 君って雫ちゃん?」
「え? あ、はい……」
いつからかわからないが、隣には優しそうな男の先輩がいた。
「俺、霰の親友の相原銀! よろしくね」
「2年4組の星空雫です。あの、ここって……?」
「ここは執事喫茶だよ。やっぱり人気だねー霰は。あっ、座らせないと……。こちらへどうぞ、お嬢様」
そういって相原先輩は椅子を引いてくれた。
「あ、ありがとうございます……」
「あとで霰に相手にしてやるようにいっておくから、コーヒー飲んでて?」
「あっ、はい!」
そういって相原先輩は出入り口へと戻っていった。