イケメン王子先輩と私。
密会。
――翌日。校門の前に向かうと、もう結城先輩はきていた。
「よう、間に合ったな。それじゃあいくぞ」
「……え!?」
そういって結城先輩は私の腕を掴んで体育館裏へと走った。な、なに?何が起こってるの……!?先輩が連れてきたのは学校の裏にある、空き地のような場所。
「先輩? ここって……?」
「お前、ここで待ってろよ。絶対にな」
そういって結城先輩はまた走っていった。数分後、先輩が戻ってきた。先輩の男らしい手の中には1匹の白い子猫がいた。
「こいつ、親に捨てられたらしくてさ。俺ん家はマンションで飼えねぇんだよな……。お前の家なら飼えるかと思って」
「へぇー……、抱いてみてもいい?」
「ん? いいけど」
そういって先輩は私の手に子猫を渡した。ふわふわしてて可愛い……。
「お前、持ち方違うから嫌がってんぞ? ……猫はな、こうやって抱くんだよ。わかったか?」
すると先輩は、私の後ろにきて私の手に手を重ねてきた。しかも顔が近いし耳元でいわないでよ……!私絶対今顔赤い……!
「……おい、聞いてんのか?」
ドキドキ……してる。私が?男に興味がなかった私が!?硬直していると私の横から顔を覗きこんできた。
「あ、うん聞いてる! ……可愛いなー猫って」
そういって猫の頭を撫でていると私の頭に先輩が手を伸ばしてきた。
「……先輩?」
「……あ、ごめん。もうすぐチャイム鳴るし、またな」
「うん、またね」
そういって私は教室へ走った。それから毎日私は先輩と猫と遊んでいた。
「先輩っ、遊具持ってきたんだけどあげていい?」
「いいよ。早速あげてみっか」
そういって先輩は子猫と遊んだ。先輩、子猫と触れ合ってる時は優しい顔になるな……。
「て、お前の家で飼えそうか?」
「うん、お母さんもお父さんも猫好きだし」
「よかったな、家が見つかって。てか、お前大きくなったなー」
先輩は子猫を抱いて、すりすりと顔を猫にして無邪気に笑った。
「……あ、そうだ。今日一緒に帰らねぇか?」
「うん、いいよ」
「じゃあお前のクラスの教室の前で待ってるから。帰んなよ?」
「わかってる。またね」
私は子猫を撫でて教室に戻った。
「あ、雫ー!! どこいってたのよ、寂しかったんだからねー!?」
「ごめん、ちょっと最近用事ができて……」
ちなみに、結城先輩と2人でいる事、子猫がいる事は誰も知らない。
「雫? どうしたの、顔真っ赤だよ?」
「なっ、なんでもない……!!」
「え、なにそれ怪しーい! あっ、もしかして……好きな人と2人で昼に会ってるんだ!?」
「は!? ち、違うし! 好きな人いないし!!」
「まさか雫が恋するなんて……! あんなに『男に興味ない』といってたのに……。人って変わるんだね〜」
私の話聞いてないし……。私は眠気に負けて5、6時間目の授業は爆睡していた。