一夜くんとのアヤマチ。
#8:「パパ、ママ、ありがとう!」
「…来ていたのか。…そうなると、他にもいるんじゃないのか? 出てきなさい」
先輩が理事長室に入る。やっぱり私はまだ弱いらしく、一番最後となってしまった。
「…確かに俺を心配してくれていたのかもしれない。でも、方向性が間違ってた。隠し通すんじゃなくて…全部、正直に話したらよかったんだ。自分の愛する人が死んで傷ついたんだとしても…それを隠すんじゃなくて、誰かに相談する。そう…できなかったのか?」
「ああ。…いや、正確に言うと、相談したにはした。だが、満足のいく答えは得られなかった」
理事長の眼光が、先輩を貫く。
「…ごめんなさい、天保さん。…私、ずっと独身だったから、その気持ちにどうしても共感できなくて…」
「だから…俺を自分の元から手放したのか?」
「そうだ。別に一人で二人もの子供を養っていく自信がなかったからではない。…一夜が愛情を十分に注がれずに育つのは予想できていた。そんな風に育っていく我が子を…見たくはなかった」
沸々とわき上がる怒りは、ついに私の体を駆り立てた。
理事長の元に歩み寄った私は、理事長の頬を思い切りはたいた。それは私の愛する人から目を背けるような真似をした理事長への、失望の意もあった。
「だったら何で逃げるんですか!?」
「日向、落ち着けって…」
「一夜くんは実の母を失って、与えられるべき愛情が与えられない…それは事実です。でも、それでもできる限りの愛情を注いであげる…それが親なんじゃないですか!?」
「…口を慎んで下さい、鷹夏先生。あなたは人の親ではない。あなたが親というものを語る資格など、どこにもありません」
「それは違う」
一夜くんの顔は、はっきりと理事長を捉えていた。
「日向は…確かに人の親だ。日向と俺の子供が…今、日向のお腹の中に宿ってる」
「何だと?」
「産まれたばかりの子供より、産まれる前の子供の方がもっと、守られないといけない。だから、日向にも…いや、日向の方が、もっと親を語れる」
先輩が理事長室に入る。やっぱり私はまだ弱いらしく、一番最後となってしまった。
「…確かに俺を心配してくれていたのかもしれない。でも、方向性が間違ってた。隠し通すんじゃなくて…全部、正直に話したらよかったんだ。自分の愛する人が死んで傷ついたんだとしても…それを隠すんじゃなくて、誰かに相談する。そう…できなかったのか?」
「ああ。…いや、正確に言うと、相談したにはした。だが、満足のいく答えは得られなかった」
理事長の眼光が、先輩を貫く。
「…ごめんなさい、天保さん。…私、ずっと独身だったから、その気持ちにどうしても共感できなくて…」
「だから…俺を自分の元から手放したのか?」
「そうだ。別に一人で二人もの子供を養っていく自信がなかったからではない。…一夜が愛情を十分に注がれずに育つのは予想できていた。そんな風に育っていく我が子を…見たくはなかった」
沸々とわき上がる怒りは、ついに私の体を駆り立てた。
理事長の元に歩み寄った私は、理事長の頬を思い切りはたいた。それは私の愛する人から目を背けるような真似をした理事長への、失望の意もあった。
「だったら何で逃げるんですか!?」
「日向、落ち着けって…」
「一夜くんは実の母を失って、与えられるべき愛情が与えられない…それは事実です。でも、それでもできる限りの愛情を注いであげる…それが親なんじゃないですか!?」
「…口を慎んで下さい、鷹夏先生。あなたは人の親ではない。あなたが親というものを語る資格など、どこにもありません」
「それは違う」
一夜くんの顔は、はっきりと理事長を捉えていた。
「日向は…確かに人の親だ。日向と俺の子供が…今、日向のお腹の中に宿ってる」
「何だと?」
「産まれたばかりの子供より、産まれる前の子供の方がもっと、守られないといけない。だから、日向にも…いや、日向の方が、もっと親を語れる」