一夜くんとのアヤマチ。
私・鷹夏日向は、今年で二十三歳となる社会人一年生。

大学では教育学部にいたので、職業はもちろん教員。ただし、高校の養護教員…いわゆる「保健室の先生」という立場だ。

「早速噛んじゃうなんて…本当、おっちょこちょいだよね」

大学で同じ教育学部だった鵜児双生(ウジ・ソウキ)くんも、この春からこの烏間高校で働くことになった。ちなみに鵜児くんは数学を担当するらしい。

「元からなんだから放っておいてよ…。あ、じゃあ私、早速保健室行かないとだから」
「あれ? そうなの?」
「うん。保健室に用事のある子がいたら、すぐに対応してあげないとでしょ?」
「なるほどな…」
「じゃあね」

鵜児くんに別れを告げて、私は保健室へと向かった。

「失礼します」

保健室のドアを開けると、中には五十代に差し掛かったくらいと思われる女性がいた。

「あら、新しい子が入ってくるって聞いたからどんな子かと思ったら、ものすごくカワイイじゃない」
「いえ、そんなことは…」
「若いんだから謙遜しなくていいの。…初めまして。ここの保健室で養護教員をかれこれ十年ほど勤めている、鴫城小谷(シギシロ・サヤ)です」
「えっと…今日からここで働かせていただく、鷹夏日向です。これからお世話になります」
「あら、日向ちゃんっていうの? 名前もカワイイじゃな~い」
「そ、そうですか?」
「そうよ。私なんか『小さい谷』で『小谷』だからね。漢字だけ見たら名字が二つよ、もう…」

その時、私が入って来た扉がノックされた。

「あらあら、早速ね…」
「もうですか?」
「保健室なんて、いつ誰が来るのか分からないから。だから日向ちゃんには直接、こっちに来てもらったわけ」
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