一夜くんとのアヤマチ。
それに気づいたのは、その日の夜のことだった。

「…、…！」

寝ていると、外で何やら言い争っている声が聞こえた。

「何…？」

シャッターをゆっくりと開け、寝ぼけ眼で暗い外を見る。外には人が四人いたが、その内三人は一夜くん、鴫城先輩、そして鶴花さんだということはすぐに分かった。

「だから…もう帰ってよ…」

先輩の震える声が聞こえる。

「自分の子供を取り返して何が悪い！」

残りの一人の正体不明の人が怒鳴る。

「黙れよ！」
「落ち着いて、一夜…」
「部外者は引っ込んでいろ！」

かつてないほどに怒っている一夜くんを抑える鶴花さんを、正体不明の人が一蹴した。

「ちょっと…そんな言い方ないでしょ！？」
「いいんです、鴫城先生。…私が首を突っ込んだのが間違いだったので…」
「雪月…」
「…ゴメン、私、戻るね。私、ここにいちゃいけないみたいだから…」

鶴花さんが涙を袖で拭いながら家に戻る。

「…もういい。続きは私の家で話そう。一夜、お前はもう寝ろ。残りは大人の話だ」
「言われなくても分かってるっての。…ほら、さっさと行けよ。俺は邪魔なんだろ？」

一夜くんが吐き捨てるように言うと、先輩と正体不明の人は鴫城家の前に止めてあった車に乗り、どこかへ行ってしまった。そして一夜くんは、その場でうつむいていた。
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