一夜くんとのアヤマチ。
いてもたってもいられなくなった私は、考えるより先に外に出ていた。

「一夜くん!」

駆け寄ると、一夜くんは下を向いたまま呟いた。

「…先生の家…泊まってもいいですか?」
「えっ?」

今度は私の方を見る。

「俺を寂しがらせないでくださいよ」

言い方は俺様な感じだけど、一夜くんが甘えているというのはすぐに分かった。

「…いいよ」

そしてそれを、すぐに受け入れている私がいた。

「お邪魔しま~す」

一夜くんを連れて、家へと戻る。今の一夜くんからは、ついさっきまでの気迫は感じられなかった。隠している、と思った私は、さっき何があったのかを聞くだけの勇気を持てなかった。

「ゴメンね、何も準備できてなくて…」
「別にいいですよ。俺が勝手に言っただけですし。…まぁ、確かに何か欲しかったですけどね」
「…晩ご飯のカレー、残ってるんだけど食べる?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」

冷蔵庫に入れておいたカレーの鍋をコンロにかける。一夜くんは、その間部屋をうろうろ、周りをきょろきょろ。子供のようだった。

「できたよ~」

カレーを皿に入れて、スプーンを置く。…匂いを嗅いでいたら、私までお腹がすいてきたような気がした…。
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