一夜くんとのアヤマチ。
ただ、それによって緊張がほぐれたのも事実で、授業はスムーズに、かつ適度に笑いも取りながら進んでいった。

「キーン、コーン、カーン、コーン」
「じゃあ、終わりにしま~す」
「起立」

イスがガタガタと音を立て、皆が立ち上がる。

「礼」

皆と同じタイミングで、私も頭を下げた。

「…ふぅ…」

やっぱり疲れは出るもので、どうにも肩がこっているような気がした。

「先生、めっちゃよかったですよ~!」

イスに座ったまま、鶴花さんが言ってくれた。

「そ、そう? 私、結構噛んじゃってたし、途中間違えちゃったし…」
「そういうのがいいんじゃないですか。ここだけの話、噛むことも間違えることもなく全部さらさら~っといっちゃう先生って、何ていうか、ロボットと授業してるみたいで、面白くないんですよね…」
「あ、何か分かる気がする…」

学生時代、特に高校には、そんな先生が多かった。そんな授業の時は…ここだけの話、よく寝ていた。

「先生、授業上手だと思いますよ」
「…鶴花さんに言われると、何かそんな気がする」

時計を見る。…そろそろ保健室に戻らないと…。

「じゃあね~」
「はい!」

忘れ物がないことを確認すると、私は軽やかな足取りで保健室に戻った。
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