一夜くんとのアヤマチ。
私がすぐに答えられなかったのは、想像に難しくないだろう。私も、一夜くんのことが、恋心という形で気になっていたからだ。

「…あっ、そうなんだ…」

ひとまず出来合いと呼べる相槌を打つ。

「先生なら、多分恋愛経験あると思うので、その時どうやって告白したのかなとか、聞いてみたくて…」
「…ゴメン」

口を突いて出たその言葉に、私自身も驚かされた。

「実は私ね、恋愛経験…ないんだ」
「えっ…」

鶴花さんの顔に焦りが見え始める。

「あ、あの、私やっぱり…」
「いいの」

諦めたような口調で、私は鶴花さんの言葉を断った。半分は、本当に諦めていた。一夜くんが、私なんかと付き合ってくれるわけがない。

…いくら、あんなことをしたからと言って…。

「…私の想像だけどね、多分一夜くんは、告白されるのを待ってると思う。…ほら、男の子って子どもの時とか特にそうでしょ? 何か欲しいものがあっても、お母さんになかなか言えなかったりとか。だから…もう、手早く行った方がいいと思うんだ」
「…でも、いつ言ったらいいのか分からなくて…」
「う~ん…あっ」

あることを思い出した私は、タブレット端末で学校の予定を調べた。

「あった、これこれ」
「何ですか?」
「修学旅行。沖縄行くって…聞いてない?」
「あ…そういえば、二年生の時に担任の先生が言ってた気がします」

そして私は、この後の展開を、そして私達の人生を大きく揺るがすこととなる、あることを口にしたのだった。

「その時に、告白してみたらいいと思う」
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