一夜くんとのアヤマチ。
「修学旅行で…ですか…?」
「うん。自由時間もあったと思うから、その時に」
「…修学旅行中にそんなことして、大丈夫なんですか?」

鶴花さんの表情が曇る。心配そうな目が、私の目に映った。

「大丈夫だって。教員の私が言ってるんだから。何か言われたら私の名前出してもらって全然大丈夫だし、そもそも隠れてするでしょ?」
「それも…そうですね!」

屈託のない笑顔を、鶴花さんは見せてくれた。

「…ねぇ」
「何ですか?」
「鶴花さんのこと…授業の時以外は『雪月ちゃん』って呼んでもいい?」

あの時、一夜くんが言ってくれたこと。

あれから、一夜くんと私の距離はますます近づいた。

だから…仲良くなるために、こう呼ばせてくれないかな?

「…いいですよ。じゃあ私も、先生のこと『日向先生』って呼ばせて下さい」
「うん。いいよ」

教師と生徒という立場を念頭に置けば、この時の私達は明らかにその垣根を超えていた。でも私達は、それよりも先に、一組の友達同士だった。

「じゃあ、今日はもう遅いし。また明日ね、雪月ちゃん」
「はい! おやすみなさい、日向先生」

雪月ちゃんを見送って、私は気づいた。

やっぱり私は…一夜くんのことが好きなんだ。

だから。

鵜児くんには悪いけど…断ろう。
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