一夜くんとのアヤマチ。
雪月ちゃんをベッドに寝かせ、イスをすぐ傍に持ってくる。

「こんな聞き方でいいのか分かんないけど…どうしたの、雪月ちゃん?」

こんなに青ざめた顔を見たのは初めてだった。その聞き方以外に、適切な聞き方が分からなかった。

「…部屋に戻ったら、急に気分が悪くなって…お腹も痛いし、吐き気もしてきて…」
「吐き気…今は? 吐く?」
「…お願いします…」

雪月ちゃんに袋を手渡す。雪月ちゃんの口から出たものは、心なしか赤いように見えた。

「とりあえず、熱測ってもらうから…これ、脇の下に挟んでくれる?」

雪月ちゃんが体温計を脇の下に挟む。その時、再びドアが叩かれた。

「は~い…」
「失礼します」

入って来たのは、一夜くんだった。

「…雪月…」

ベッドに寝ている雪月ちゃんを見て、一夜くんは驚いた顔をした。どうやら、雪月ちゃんのお見舞いというわけではないらしい。だとすれば…?

「…ちょっと気分悪くて…」

嫌な汗が、背中に一本の線を書いた。

「…一夜もなの…?」
「ああ。…ヤバい、ちょっと吐き気が…」
「一夜くん、これ!」

袋を素早く取り、一夜くんに渡す。

…同じ症状だ、この二人…。
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