一夜くんとのアヤマチ。
#5:「あなたはもう必要ないです」
緊急で帰る手続きがなされ、あれから一夜明けた時にはもう沖縄にはいなかった。

そして私は今、烏間高校の会議室にいる。

「では、始めましょうか」

烏間高校の理事長である鳩山天保(ハトヤマ・アマヤス)先生の一声で、この場に集まった人全員が一斉に起立し、頭を下げた。

「ただいまより、鷹夏日向養護教員および三年四組生徒鴫城一夜の処分に関する職員会議を執り行います」

ついに、職員会議が始まった。

「…うぅ…」

あの時も部屋に来ていたベテランの先生達が、右と左から私と、隣に座っている一夜くんを睨みつける。

「先生、視線系のプレッシャーに弱いタイプなんですか?」

一夜くんが小声で問いかける。

「視線系っていうか、プレッシャーにはとにかく弱くて…」
「…俺一人じゃ限界があるんで、日向先生もしっかりして下さいよ」

しっかりしなきゃいけない。それは私が一番よく知っている。

せっかく手に入れた養護教員の仕事を、失ってしまうかもしれない。私がしてしまったのは、それくらい重いことなのだから。

「ではまず、鶴花さんの方からご意見をお願いいたします」

この場には、雪月ちゃんのお父さんも来ていた。マイクを受け取ると、震え気味の声で話した。

「雪月の父でございます」

その声からは、やり場のない静かな怒りも感じられた。
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