一夜くんとのアヤマチ。
「…一夜くん…」

こんなに私のことを好きでいてくれてたのに、私はそれに気づけなかった。

そんな人がいるって知ってたら…私はきっと、泣いていた。だから、今は私の涙が一夜くんの肩を濡らしていた。

「…ゴメンね…」
「何で謝ってるんですか。悪いことなんてしてないですよ」
「…うんっ…!」

私の髪を撫でる風は、何なのかは分からないけれど、何かを抱きながら通り過ぎて行った。

「…あのね」

そして私は、好きな人がこんなに近くにいるということへの高揚感からか、こんなことを言ってみたのだった。

「…さっきの一夜くん、カッコよかったよ」

学校からは追い出される形となってしまったけれど、私は悪くない。小さな勇気も、元気も、与えてくれたのは一夜くんだった。

…雪月ちゃん。私、雪月ちゃんの分までいっぱい生きるから。

「よかったら…これからも、さっきみたいに話してくれない?」
「さっきみたいにって?」
「…私のこと、『日向』って呼び捨てにして、あと…敬語なしで。その方が…何か、キュンと来るから」

形式としてはこの上なく変になってしまったが、これが、私の人生初の告白だった。そしてそれと同時に、人生初の恋愛だった。

「…じゃあ…帰ろうか、日向」

一夜くんの体が私から離れる。そしてそれと同時に、私の左手と一夜くんの右手が触れ合った。
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