一夜くんとのアヤマチ。
ひとまずは、ということで、一夜くんと私は私の家にいた。

「母さんにはとりあえず、ここにいるってことはメールしたから」
「うん…ありがとね…」

最近生理が来ないことに、確かに違和感は抱いていた。でも、産婦人科の話を持ち出されるまで、妊娠しているなんて思ってもみなかった。

「…まあ心配しなくても、俺の母さんは日向には優しいから大丈夫だと思う」
「…うん…」
「問題は…日向の方だな」

この状況において、最大の壁はお父さんだった。過保護なお父さんは昔から礼儀にうるさく、現状はその礼儀が全くもってなっていなかった。

「…言わないでおくって…できるかな?」

私とお父さんの他の親子より密接な関係なんて一夜くんが知っているはずもないのに、何故か問いかけてしまう。

「厳しいんじゃないか? 三カ月ってことは産まれるまであと半年はかかるわけだし、隠すのは限界があると思う。…それに、黙ってたら後が怖いからな…」

どんなに大目玉を食らうか、それは容易に想像できた。そしてそのたびに、背筋が凍りついた。

「…やっぱりそうだよね…」
「とにかく、だ」

一夜くんがソファから立ち上がる。

「産むつもりなんだろ?」
「…うん」

どうやってできたとしても、一つの命であることに変わりはない。その命を奪うことなんで、できるはずがなかった。

「じゃあ、ちゃんと産めるように、環境を整えないと。そのためにも…できるだけ、事情を知ってる人は多い方がいい」
< 71 / 120 >

この作品をシェア

pagetop