一夜くんとのアヤマチ。
先輩が帰って来たのは、私達が病院から戻って来た一時間後くらいだった。

「…多分、母さんだと思う」

インターホンが鳴る。

「…出るね」

そうは言ったものの、全身が小刻みに震えているのは分かっていた。

「は~い…」

外には、先輩が立っていた。

「ゴメンね~、日向ちゃん。一夜の面倒見てもらって…」
「あっ、いえ…」

今はそれどころじゃない。もっと大変なことが起きたんです…。

「…あの、先輩」
「ん?」
「…えっと…聞いてほしいことがあるんですけど、いいですか…?」

改まってしまうと、本当は逆効果かもしれない。自分で言葉を吐いたその瞬間に、そんな考えが頭をよぎった。

いつもの私からは、恐らくそんな改まった調子なんて微塵も感じられないはずだ。私が改まってしまうと、警戒心を抱かれてしまう…。

「…大事なことなの?」

…ほら、やっぱり警戒されちゃったよ。自分の発言を後悔しつつ、先輩の問いかけに首を縦に振った。

「…分かった。上がらせてもらうわね」

心臓の音が先輩にも聞こえてしまいそうで、怖かった。そしてその感情がまた、鼓動を早める。この悪循環で、倒れてしまいそうだった。
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