一夜くんとのアヤマチ。
そして夕方、インターホンが鳴った。何のことはない。先輩が、一夜くんを迎えに来たのだ。

「は~い…」

もはや喪失感すらも喪失した私は、ずっと座り込んでいた床からようやく立ち上がり、亡霊のような足取りで玄関に向かい、ドアを開けた。

「ゴメンね~、日向ちゃん。一夜の面倒見てもらって…」

先輩は昨日までと同じような調子だったが、私を見るなり表情を変えた。

「…どうしたの?」

問いかけに答える気力すらなかった。

「一夜は…?」
「…出て行っちゃいました…」

それでも、伝えなければいけないことはどうにか伝えられた。

「…どういうこと…?」
「…すみません…私のせいなんです…」
「ちょっと…とりあえず、中上がってもいい? ゆっくり話を聞きたいから…」

体が喋っているのをただただ聞いているような奇妙な感覚に見舞われながら、私は先輩にいきさつを話した。話していくうちに少しだけ気は楽になったのだが、それでもやっと「喪失感を取り戻した」程度のものだった。

「全くもう…何やってんのよ、一夜は…」
「すみません、私のせいで…」
「日向ちゃんは悪くないって言ってるじゃない。一夜が早とちりしただけよ」
「早とちりとはちょっと違う気がするんですけど…」

時計を見る。詳しい時間は計算する必要がなかったのでしなかったが、一夜くんが出て行ってからそれなりに時間は経過していた。

「…ちょっと電話してみるわね」

先輩が電話を取り出し、耳に当てた。
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