一夜くんとのアヤマチ。
「先輩…」
ケータイを耳から離すと、先輩は昨日と同じように、首を横に振った。
「どうしよう…もう時間なのに…」
「…ひとまず、メールはしておくわね。もう日向ちゃんのお父さんの所にいるって」
「はい…」
家を訪ねることになっていた時間、五分前。一夜くんからの連絡は、まだなかった。それどころか、電話にも一切出ない。俗に言う、音信不通だった。
「まさか…何かの事件に巻き込まれたりしてないわよね…」
「ちょっ、そんな物騒なこと言わないでくださいよ…。戻ってくるって言ったの、先輩ですよ?」
「まさかの話よ。…もしかしたら、もうすでに中にいたりして」
先輩がお父さんの家があるマンションを指さす。駅に近いのが幸いして、場所は分かりやすいことこの上なかった。
「とりあえず、二人だけでも行ってみよう。遅れちゃうと目も当てられないし」
「はい…」
普段より少し早い鼓動が、嫌な予感を告げていた。
「…ふぅ…」
電話であんな話をされた翌日だ。私が訪ねても、門前払いを食らうだけかもしれない。
「じゃあ先輩、よろしくお願いします」
「うん」
古典的な方法だけど、これしか思い浮かばなかった。先輩はインターホンを押すと、鼻をつまんだ。
「はい」
インターホンのスピーカーから、お父さんの声が聞こえる。
「宅配便で~す」
…こんな漫画みたいな方法が通用したのは奇跡と呼ぶべきか。お父さんはドアを開けたその瞬間は、何の疑いも持たない顔をしていた。
ケータイを耳から離すと、先輩は昨日と同じように、首を横に振った。
「どうしよう…もう時間なのに…」
「…ひとまず、メールはしておくわね。もう日向ちゃんのお父さんの所にいるって」
「はい…」
家を訪ねることになっていた時間、五分前。一夜くんからの連絡は、まだなかった。それどころか、電話にも一切出ない。俗に言う、音信不通だった。
「まさか…何かの事件に巻き込まれたりしてないわよね…」
「ちょっ、そんな物騒なこと言わないでくださいよ…。戻ってくるって言ったの、先輩ですよ?」
「まさかの話よ。…もしかしたら、もうすでに中にいたりして」
先輩がお父さんの家があるマンションを指さす。駅に近いのが幸いして、場所は分かりやすいことこの上なかった。
「とりあえず、二人だけでも行ってみよう。遅れちゃうと目も当てられないし」
「はい…」
普段より少し早い鼓動が、嫌な予感を告げていた。
「…ふぅ…」
電話であんな話をされた翌日だ。私が訪ねても、門前払いを食らうだけかもしれない。
「じゃあ先輩、よろしくお願いします」
「うん」
古典的な方法だけど、これしか思い浮かばなかった。先輩はインターホンを押すと、鼻をつまんだ。
「はい」
インターホンのスピーカーから、お父さんの声が聞こえる。
「宅配便で~す」
…こんな漫画みたいな方法が通用したのは奇跡と呼ぶべきか。お父さんはドアを開けたその瞬間は、何の疑いも持たない顔をしていた。