一夜くんとのアヤマチ。

「は～い…って…」

宅配員の格好なんて一切していない先輩と、その横に立っている私を見て、お父さんの顔は凍りついた。

「…日向…」
「どうしたの？　今日、ここ来るって言ってたでしょ？」
「…あ、ああ…」

何故か驚きを隠せない様子のお父さんとは対照的に、わずかながらも残っている平常心をあえて前面に押し出す私。

「…この方は？」

しばらく見ない間に靴の増えた玄関で、冷や汗をかきながらお父さんは先輩を見て、そして私を見た。

「初めまして」

私が説明しようとしたが、それより先に先輩が挨拶をした。その声には、どこか強かさを感じられた。

「日向さんの仕事上の先輩に当たります、鴫城小谷と申します」
「鴫城…」
「どうされました？」
「…いえ、何でもありません」

靴を脱ぐ。その時、先輩の顔は私の耳元にあった。お父さんが部屋の奥を向いた隙に、先輩が近寄ったのだった。

「…どうしたんですか、先輩？」

私が尋ねると、先輩はささやくような声でこう答えた。

「…気をつけて」
「えっ？」
「こんなこと、言いたくないんだけど…この人、多分一夜のことを知ってる」
「…どういうことですか…？」
「さっき私が名前を言った時、ちょっと動揺してたの。それに、この靴」

玄関に置いてある靴をもう一度よく見る。その中の少しサイズの違う靴を発見するのに、そう時間はかからなかった。

「これ…一夜の」