一夜くんとのアヤマチ。
よく分からない状況のまま、ひとまず家に連れ込まれた。

「…あの…先輩…」

二人で話すことはよくあったのだが、鵜児くんがいるということもあってか、今回ばかりは史上最大の嫌な予感がまとわりついていた。

「一つ、質問してもいい？」

先輩の最初の言葉は、それだった。

「…何ですか…？」
「鳩山理事長の顔、見たのって何回？」
「えっと…初日に見たのと、あとは職員会議で…」
「あの夜は見なかったの？」

先輩の語調が変わる。

「…あの夜って…？」
「その子ができた日よ」

先輩の目線が一瞬私のお腹に注がれ、そしてすぐに私の目に戻った。

「私と一夜と雪月ちゃん、そしてもう一人、誰かいたでしょ？」

おぼろげな記憶をたどる。確かにあの時、黒いマネキンと化していた誰かがいた。

「…まさか…」
「そう、そのまさかよ。あれ、理事長なの」
「…何であんな所に…？」

私が尋ねると、先輩は一つ、大きくため息をついた。

「…日向ちゃん。驚かないで聞いてほしいんだけどね」
「はい…」

驚かないで、と言われるとたいてい驚いてしまうものだけど、それにしてもかなりの覚悟をしていないと耐えられないような話をしそうで、怖かった。私も息を吐き、少しでも受け止められるものを大きくしようと努めた。

「理事長は…いえ、天保さんは…双生の、そして一夜の父親なの」
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