君の味に落とされて。
おかしな王子様
「いらっしゃいませ~」
カランカラン、と来客を知らせるベルが扉の上で鳴る。
レジのカウンターへと顔を出したのは、常連さんの一人のおじいさん。
「やぁ、純ちゃん。いつものはあるかい?」
「はいっ、少しお待ちください」
おじいさんのいつもの、とはモンブランのこと。
奥さんといつも一緒に食べているらしい。
予約の札のついたケーキの箱を取って、カウンターに置き会計をする。
「じゃあまた来るよ」
「ありがとうございます!」
カランカラン、とまたベルが鳴っておじいさんが出ていく。
時計を見ると、時刻は7時55分。
閉店は8時だからもう片付けを始めようと手を動かす。
「純菜ー!外の旗閉まって頂戴」
「はぁいー」