君の味に落とされて。
おかしな王子様




「いらっしゃいませ~」

カランカラン、と来客を知らせるベルが扉の上で鳴る。

レジのカウンターへと顔を出したのは、常連さんの一人のおじいさん。


「やぁ、純ちゃん。いつものはあるかい?」


「はいっ、少しお待ちください」


おじいさんのいつもの、とはモンブランのこと。

奥さんといつも一緒に食べているらしい。


予約の札のついたケーキの箱を取って、カウンターに置き会計をする。


「じゃあまた来るよ」

「ありがとうございます!」


カランカラン、とまたベルが鳴っておじいさんが出ていく。

時計を見ると、時刻は7時55分。

閉店は8時だからもう片付けを始めようと手を動かす。

「純菜ー!外の旗閉まって頂戴」

「はぁいー」


< 1 / 90 >

この作品をシェア

pagetop