君の味に落とされて。
先輩は入り口付近でお母さんに笑顔でぺこっとお辞儀していた。
あ、あたし制服のままだけどいいかな、補導とかされないよね?
先輩を送るだけだけど、めったに夜に外に出ないあたしはちょっとわくわくしていた。
「先輩、駅まで行くんですよね?」
「そうだけど、…まさか、お前付いてくるの?」
先輩がガチャ、と店の扉を開けると外は真っ暗。
「え、ダメ…ですか?」
「いや、ダメっていうか、危ないだろ普通に」
「大丈夫ですよ~」
なんて言いながら既に歩き始めているあたし。
「バカか。後輩に、しかも女に送ってもらう先輩がいるかよ」
確かに言われてみたらちょっと変かも?
「い、いいんですよ、あたし駅に行きたいです」
「なんだよ駅に行きたいって」
呆れたような笑ったような声を出しながら、先輩があたしの隣に並んだ。