君の味に落とされて。
「おはよう、ケーキ!」
目の前のにっこり顔の幼馴染み、朝比奈 唯は今日もあたしの名前を呼ばない。
あぁ、なんか本のタイトルでありそう。
「そのケーキってのやめてよ~」
「だって毎日あっまーい匂いするからさ!」
「あたしはケーキみたいに美味しいわけでもないしさ~」
「ケーキみたいに可愛いからいいんじゃない?」
「意味わからないし…」
確かにお父さんの作るクマチョコケーキは可愛いけど…。
あたしは別に可愛くないし。
「いつか彼氏できたら純菜んとこのカフェ行くからさ!」
「いつかね、うん」
「ぶっ飛ばすよ?」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら唯と通学路を歩く。
ちらほらとあたしたちと同じ高校の制服の人が道を歩いている。
「あれ、なに?」
「さぁ…?」
学校まで残り100メートルぐらいのとき、校門の前に人だかりが出来ているのが見えた。
芸能人でも来ているのかな。