君の味に落とされて。




「先輩、お待…、ってあれ?」


いなくなってる?


きょろきょろと周辺を探すけど、見当たらない。


なにか用事があって帰ったのかな?


「ま、いっか…」


また話ができると思ったのに、ちょっと残念、なんて。


階段を下り始めると、後ろからたたたっ、と走る音が聞こえた。


「おーいお前、人が待ってたのに先帰るとかどういうこと?」


振り返って、走って来たらしい玲於先輩を見て少しびっくりする。


なんか、怒ってます?

えぇえ…!


「え!違うんです、先輩いなかったから…えぇと…」


「ちょっと離れた隙に帰るなあほ。送るって言っただろ」


「っ!!」


ぐいっと腕を引かれて、無理矢理手を繋がされる。


でも、嫌じゃ…ない、かも。


先輩の大きくてあったかい手に、包まれるの。


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