君の味に落とされて。
もやっとしたものが心に現れる。
なんか、やだな。
先輩はモテるって知ってるし、会った日だってあんなに女子に囲まれてたのに。
今、親しげに名前を呼ぶ玲於先輩の声が、ちょっとイヤだ。
「なに怖い顔してんの?良介がイヤなの?」
玲於先輩が少しかがんで、あたしの目線になって話す。
「俺が悪いみたいな言い方するなよ。ってか、どうしたの、鼻?」
良介先輩が鼻を指差してきて初めてあのガーゼが貼りっぱなしだったことを思い出した。
慌てて片方の手のひらで顔を覆うと、ケラケラと笑われた。
「別に隠さなくても大丈夫だよ」
「…この子あほだから体育んときサッカーボール顔面に当たったんだってさ」
「先輩、あほはひどいですよ…」
ああもう恥ずかしい。
早くこの場から退散したい。