君の味に落とされて。




「もう満足」


先輩はそう言い、ぽんぽん、とあたしの頭を撫でた。


と思ったらふいに口を耳元に寄せてきて、


「他の男が見る前でよかったよ」


と囁いた。


「!?」


あんまりにびっくりして机にぶつかって座り込んでしまった。


「動揺しすぎ。あ、俺のクラスは劇やるから見に来てよ?じゃあばいばい」


口元に意地悪な笑みを残したまま、玲於先輩は手を振って更衣室を出ていった。


「ナマ玲於先輩…やべぇ…」


唯がぼそりと呟いた。


やばい、所じゃないってもう…


火照って自分の頬に手のひらを当てて少しでも冷まそうとする。


先輩の息の感覚がまだ残っている左耳が熱くて仕方ない。

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