君の味に落とされて。



先輩がいなくなったあとはすぐに制服に着替えた。


「純菜、顔真っ赤」


「言わないで…、もうちょっと待って、落ち着きたい…」


心臓がドキドキなんて軽いものじゃなくてバクバクしてる。


すぅはぁと深呼吸をして、なんとか意識は保つ。


そうでもしなきゃ頭の中が今の出来事でいっぱいになってしまう。


「あ、ね、向こうで八木さんが呼んでるから行かなきゃだよ」


ぐい、と唯に手を引っ張られて更衣室を出る。


教室に戻ると、ケーキのメニューを書いてほしいんだ、と画用紙とペンを渡された。


「佐倉ちゃん、顔赤いけど平気?熱ない?」


八木さんに心配されて、慌てて首を振った。


「大丈夫大丈夫、ちょっと、唯に頬っぺた引っ張られてたから…」


そんな言い訳を言うと、隣にいた唯がなんであたしが!という風に見てきたけど、黙っててくれた。

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