君の味に落とされて。
「もう仕事終わったんなら、送ってくから仕度しな。唯ちゃんに頼まれたし」
ゆ、唯…気が利きすぎだよ、嬉しいけど…恥ずかしい。
「…あ、先輩、劇、すごかったです」
「まぁな」
ふっと笑った先輩は当たり前だけど、自然な笑顔。
劇でのあの演技の笑顔も好きだけど、自然体のほうが好き。
…て、好きとか…なに考えてるのあたし。
「なに?顔赤いけど、風邪?」
「あわわ、違います大丈夫です!カバンとってきます」
あたしの顔を覗きこんでくる先輩と目をあわせないようにして、慌ててカバンを取りに行く。
好きかもしれない、なんて思っちゃうとただこうして並んで廊下を歩くのでさえ緊張する。
「お前さ、なんかあっただろ」
「え、え?」
「なんか元気ねぇし」
き、気づかれている…。
だけど、先輩のせいでちょっと落ち込んでますなんて言えるわけがない。
どう誤魔化そうかなぁ…