君の味に落とされて。
 


心臓がドキドキと音を立てる。


さっきから気を紛らそうと他のことを考えてるけど全くだめだ。


「ありがとうございました!見事な技ですねー、痴漢も撃退できそうですね!

では、次へ参ります!エントリーナンバー7番、2年E組です!」


佐伯さんたちと入れ替わりでステージの方に歩いていく。


「よし、行こうか」


ナチュラルに森くんに左手を差し出されて、あたしも特に深く考えずその手をとった。


数段の階段を上がり、ステージの上に立つと大勢の人があたし達に注目しているのがわかった。


思ってたよりもすごい人だ…


隣では森くんがマイクを受け取って、自己紹介を始めていた。


「2年E組の森 望向と」


「あっ、佐倉 純菜です!二人でダンスをします!知っている曲だったらみなさんもノッてみてください!」


脇からマイクを向けられ、慌てて自己紹介と出し物説明。



ここからは、森くんがマイクを返して、右手を上に上げたらミュージックスタート、だ。


ふぅっと少し息を吐いて最初のポーズをとる。


右目の端で、森くんが手を上げたのをちらりと見た瞬間、音が流れ出した。


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