君の味に落とされて。
前半は会場は静かめだったけど、だんだんと手拍子をしてくれるようになった。
よし、振りも忘れてないし、このまま終われそう―…なんて、少し油断したのが、いけなかった。
練習中にも転びそうになったあの振り。
「…っ!」
ちょっと森くんと手を繋ぐのが遅れて、ターンのタイミングがずれた。
そのちょっとの瞬間で焦ったあたしは、さっきの練習のときよりも派手に森くんに寄りかかってしまった。
やばい、これじゃ、森くんを巻き込んで倒れちゃう!
「…大丈夫」
「えっ、」
耳元で森くんの声が聞こえて、転びそうになったあたしの腕を上にあげて、体重を支えて立て直してくれた。
危なかった…、ごめんね森くん…!
そのあとはなんとか目立ったミスはせずに、最後のポーズを決められた。
「見事なダンスでした!ありがとうございました!では続いて…」