君だけに贈るラブソング
心の中で名前を呼んで、ドアの向こうを見ようとしていた自分にハッとして、エレベーターの方へ向かう。
……強く、ならなくちゃ。
「…………」
あ、スマホ……。
制服のポケットに入っていたそれを取り出すと真っ暗な画面を見つめる。
そういえばお姉ちゃんの葬儀中に鳴ったらいけないと思って電源切りっぱなしだった。
エレベーターで下に降りつつ、スマホの電源を入れると、知らない番号から夜中になってたくさんの着信が来ていた。
きっと、叔父さんと叔母さんたちだ。
出て行ってすぐ電話がかかって来てなかったってことは、そんなに心配してなかったってことだよね?
すぐ帰って来るだろうって?
でも日付を超えても帰って来ないから、焦って電話をかけてきたってこと?
「……はぁ」
やっぱり、叔父さんと叔母さんのことは好きになれないや……。
《莉緒、大丈夫……?》
《なにかあったらなんでも言ってね》
次に見たのはチャットアプリであるLINEで受け取っていたメッセージ。
親友の城野朱理(しろのあかり)からだ。
《ごめん、電源切ってた。ありがとう。また学校でね》