君だけに贈るラブソング
返信をして、またポケットにスマホを入れた。
*
無感情のまま、家でかばんに教材を詰め込むと学校に向かった。
通い慣れた通学路。
冬特有の乾燥した空気に、息を吐くと白くなってやがて消えた。
……見えている景色が、全然違う。
まるで、モノクロの世界にでも迷いこんでしまったかのようだ。
大切な人がいなくなった世界は、こんなにも寂しくて、虚しい。
「…………」
そして校門を抜け、昇降口も抜ける。
クツから上履きに履き替えながら、周りを見渡すとすこしだけ動きを止めた。
ついこの間あったバレンタイン後で、結ばれたカップルが多い。
好きな人がいない私には友だちとチョコを交換しあうイベントでしかなかったけれど。
……春人って甘いもの好きかな。
「あ、おはよー!莉緒!」
「おはよ、朱理」
背後からした声に、振り向くと朱理が笑顔で近づいて来た。
「大丈夫?ちゃんと寝れた?」
「うん、大丈夫」
……春人がいてくれたから。
「なにかあったら言うんだよー?すぐ飛んで行くからっ!」
「うん、ありがとう」
朱理とは中学にあがってからの仲。
しっかりものの朱理と、ちょっと抜けてる私。
辛党の朱理と、甘党の私。
正反対の私たちだけど、ふたりでひとりと言っても過言じゃないほど仲良しだ。