君だけに贈るラブソング



……いつも、そうやって笑ってたらいいのに。


私、春人の笑った顔が、好きだ。



***



「あがっていいよ」


「……お邪魔します」



朝ぶりの家に帰った。


駅からはすこし離れているけれど、近くにスーパーやコンビニがある、住みやすい場所。


家賃は安いけど、わりと新しいアパートだ。


玄関を開けて家の中に足を踏み入れると、途端に胸が切なくなる。


……お姉ちゃんがいない現実をつきつけられるから。



「座ってて」


「…………」



春人をリビングのソファに座らせると、隣接している私とお姉ちゃんのふたりで使っていた部屋に入る。


ここも春人の家と同じ1LDKだけど、やっぱりウチのほうが狭い。


……あぁ、なんか、泣きそう。


ここには、お姉ちゃんとの思い出がありすぎる。


毎日ふたりでお布団を並べて、天井を見ながらいろんなことを語り合った。


お姉ちゃんの恋の話。

お姉ちゃんの学生時代のこと。

お姉ちゃんの会社で起こった面白かったこと。


私の学校のこと。

私の友達のこと。

私の好きな音楽のこと。


……たくさんのことを、この部屋で、家で語り合った。



「……っ……」




不意に涙が溢れそうになって、ぐっとノドにチカラを入れて我慢した。


泣いたらきっとダメになる。


昨日の私みたいに。


きっと壊れる。


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