君だけに贈るラブソング
今をときめく歌手たちはみんなこの人の歌をうたう。
そして有名な音楽プロダクションの社長もやってるよね。
「あー……それ」
春人が力ない目でテレビを見すえる。
「俺の親父」
「……っ!?」
えぇええ!?
春人の、お父さん……!?
な、なるほど。
前に春人自分は御曹司だって言っていたけど、そういうことだったんだ!
「そうなんだ!」
「……ん」
「春人のお父さんってすごい人なんだね!私、あの歌好きだよ。なんだっけ、えーと……あっ!思い出した!」
思い出して歌おうと息を吸ったその瞬間。
ーーガシャン!!
激しくお皿が割れる音と、私と春人が床に倒れる音が響く。
ひじと腰を打ちつけてひどく痛む。
いたたた……そう言いながら目を開けると目の前に春人の顔。
泣きそうな、悲しそうな。なんとも言えない切ない表情をして私におおいかぶさり、口もとを押さえつける春人。
は、春人……!?
「あいつの歌は、うたわないで」
「……っ……」
「お願いだから、莉緒までうたわないで」