君だけに贈るラブソング



今にも泣きだしそうな顔。
いや、心の中ではもう泣いていると思う。


いつもは無表情。
ポーカーフェースを貫いている春人なのに、こんな表情をするなんて。


抑えられている手。
春人に安心してもらいたくて、何度も何度も頷いて見せた。



「……っ……」



私の口を押さえていた手をゆっくり退ける春人。
そして慣れない笑顔を私につくって見せた。


……この人はどんな闇をその心に抱えているんだろう。


春人の左胸に手を置くと、鼓動を感じた。


この小さな小さな胸に。
どれだけの苦しみを抱えて生きているの?


柔らかいその髪に触れて、大きくてすこし猫背なその背中に触れて。

私は優しく君を抱きしめた。



「大丈夫だよ、大丈夫。私がいるから」



ひとりぼっちの孤独な私たちが出会った意味を探すとしたら、

きっとこうして冷えたお互いの温もりを分け合うため。



「私はなにがあっても春人の味方だよ」



……きっと、そうでしょ?



***



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