『笑って?』『大丈夫…一人じゃないよ』


__________

私が三歳の頃

お母さんは再婚をした

その人の名前は冴沼 修

血の繋がった父親は

子供が嫌いらしく

子供が出来たと知った途端

離婚をした

お母さんは私を責めなかった

私が出来たから

離婚をしたのに

お母さんはそれでも

産まれてきてくれて

良かったと言った

私はお母さんが

大好きで仕方がなかった

私が五歳の頃

お母さんとお父さんが

喧嘩をしていた

喧嘩をしたその日から

お母さんとお父さんの

仲が悪かった

そんなある日

皿が割れる音や

物が壊れる音や

お母さんの怒鳴り声や

お父さんの怒鳴り声が

聞こえた

だけど

その日はいつもと違った

お母さんの悲鳴が聞こえた

皿の割れる音と

何かが落ちる音と

一緒に

私は様子を見に行った

お母さんが血だらけで

倒れていた

私はお母さんと

お父さんに呼び掛けた

お父さんは私に

明日話そうと言って

お母さんを連れていった

後から知った

お母さんを森に

連れていって

埋めたらしい

お父さんは私に

誰にも何も

話しちゃ駄目だと言った

私はその日から

共犯者になってしまった

私が小学6年の頃

警察が来た近所の人が

皿の割れる音や

物が落ちる音がするから

通報したらしい

私は笑って嘘をついた

罪が重くなった瞬間だった

本当は虐待をされてます

と言いたかった

あの時ほど

後悔をしたことはない

私が中二になって

少し経った頃

お父さんは

私にお母さんに会いたい?

と問いかけた

私は会いたいと言った

お父さんは連れていってくれた

お母さんを埋めた場所に

私はその日

二つ失った

処女と

お父さんを

お父さんは

お母さんの元に

逝きたかったらしい

だから

お父さんは

私にお願いをした

お母さんと

同じ場所で

眠りたいと

私は

最期の願いを聞いた

毒薬を飲んで死んだ

お父さんを

お母さんが

埋まっている場所に

埋めた

また重い罪が重なった

もう罪を犯して

しまったのなら

いくら増えたところで

何も変わらない

ならいっそのこと

お父さんの罪も

私の罪に変えればいい

私が大好きな

お母さんを殺した

お父さんを殺した

お母さんを埋めた

お父さんを埋めた

私は罪を増やした

私は

警察に死亡届けは

出さなかった

そしたらもっと

罪が重くなる

これでいい

警察が来た日に

私が殺ったと

私が埋めたと

言えばいい

そしたら

きっと警察は信じる

だから私は

警察が来た日に

話した

笑いながら

嘘とお父さんを埋めた事を

場所は話さなかった

お母さん達が安らかに

眠ってる場所を

汚してほしく

なかったから

警察の人は

証拠もないのに

逮捕はできないと言った

そんなある日

私は異変を感じた

だけど私は

それに気づかない

振りをした

異変を感じて

数ヶ月経った頃

血を吐いた

病院に行かないと

いけない

だけど私は

その場から動けなかった

栄養不足 睡眠不足

そんな状態で

行けるわけがなかった

それから数日経った頃

警察がまた来た

動けないから

行けない

警察は

ドアを開けて

入ってきた

動けない私を見て

病院に連れていってくれた

医者は

私は病気だと

そして

お腹の中に

子供がいると

だけどその子供は

産めないと

子供はもう

死んだと言った

私は本当に

殺してしまった

小さな子供を

子供がいたと

知らなかったとはいえ

私の身勝手な行動で

小さな命を

殺してしまった

どこか

遠くの場所に行って

気持ちを

落ち着かせよう

そして私は

この街に来た

それでみんなに出会った

それから私は

ある決断をした

『いつか

警察の人達に

真実を話します』

本当は話したくなかった

だけど

真っ直ぐな

亜香里と側にいて

いつも明るい

クラスのみんなと

一緒にいて

冴崎のこと

好きになれたことで

嘘を付いてるのが

嫌になった

だけど

もう少しだけ

側にいたい

思ったら駄目なのに

それで

先延びして

高校三年生

こんな中途半端な時期に

退学することになって

ごめん

丁度今日警察の人達と

話をするんだ

もうみんなと

会うことはない

今までありがとう

嘘ついてごめん

最後に

みんなが成人したら

今みんなが手紙を

読んでる日に

来てほしい場所がある

場所は

隣の隣の県の

○○市○○○町△△ー△△と

○○市○○○町□□公園の

奥にある小さな広場

先に言っとく

黙っててごめん


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