~Lion Kiss~
私が入ってきても誰も気に留める様子はない。

受付で受け取った許可証を首から下げ、セキュリティゲートを通らなければならないので、当然と言えば当然かもしれないけど……。

「すみません、相澤さんはいらっしゃいますか?」

近くにいた女性に尋ねると、彼女はニッコリ微笑んだ。

「社長ならあちらです。あのドアを開けて突き当たりの社長室にお入りください」

彼女が指し示したのは遥か向こうの、私が壁だと思っていたところだった。

なに、あの向こうに部屋があるの?

私は女性にお礼を言うと、ゆっくりと社長室に近付いた。

ドアノブに手をかけてそっと開けると、廊下を挟んで左側のドアには社長室、右側には会議室とプレートが貼られている。
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