~Lion Kiss~
その時、ガチャリとドアが開いた。

恵美理さんの顔がみるみる強ばる。

ドアに眼を向けると、背の高い眼鏡をかけた男性が立っていた。

來也が頭を下げた。

「青木さん、御足労お掛けしてすみません。奥様がご気分を悪くされて」

眼鏡の男性……恵美理さんのご主人は申し訳なさそうに頭を下げた。

「相澤さん、お電話ありがとうございます。わざわざすみません。……恵美理さん大丈夫ですか?歩けますか?」

私は胸を突かれて、ただただ恵美理さんの旦那さんを見つめた。

柔らかく優しく、恵美理さんを心から気遣うような温かい眼差し。

ああ彼は、心の底から恵美理さんを愛しているのだ。
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