~Lion Kiss~
涙で濡れた瞳を真っ直ぐ上げて、恵美理さんが敦也さんを見つめた。

「敦也さん、今までごめんなさい。それから……ありがとう」

敦也さんがそっと恵美理さんの手を握った。

それから來也を見て、

「相澤さん、妻がご迷惑をお掛けしました。後日改めてお詫びに伺います」

敦也さんは深々と頭を下げると、恵美理さんを連れて帰って帰っていった。

その時、來也が小さく笑った。

「……なんだよ、その顔」

「………素敵なご主人だなと思って」

來也が頷いた。

「そうだな」

そういった彼の顔色は、良くない。
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