~Lion Kiss~
「治人さんとはさっきエレベーターホールで会ったの。総二郎さんが、お兄さんには話をしたから、來也を病院まで連れていけって。そしたら、治人さんが車で送ってくれるって」

來也は唇を引き結んで私の言葉を聞いていたけど、やがて治人さんに視線を移すと小さく頭を下げた。

「先輩、面倒かけてすみません」

治人さんは、首を横に振った。

それを見た來也は、小さく頷いてから私を呼んだ。

「マヒル、給湯室のタオル取ってきて。出てすぐ右側のドア。タオルを巻き付けておかないと、歩く度に出血するかも知れない」

私は頷いてタオルを取りに行くと、柄を避けるようにしてそれを來也の腹部に巻いた。

「相澤。このままエレベーターで地下駐車場まで行く。立ち上がれるか?ゆっくりでいい」

來也は頷いて立ち上がった。
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