~Lion Kiss~
一度処置室に入った來也は、次に出てきた時は幅の細いストレッチャーに乗せられていて、二人の看護師さんに連れられていってしまった。

「二階の手術室の前でお待ちください」

治人さんは、小さく返事をしてから私を見て柔らかく笑った。

「大丈夫。相澤はタフだから。きっと今からレントゲン撮影だよ。二階に上がろう」

エレベーターへと向かいながら、私はすがる思いで頷いた。

「治人さん、付き合わせてしまってごめんね」

治人さんは首を横に振ってからフワリと笑った。

「……僕はね、マヒル。
……償いたいんだ、あの日の事を」

あの日の事とはきっと、酔って帰ってきて私に乱暴した日の事だ。
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