~Lion Kiss~
「マヒル。本当に、本当にごめん。
いつも思ってた。あの日に戻れたらって。いや、あの日だけじゃない。僕は君を」
そこまで言って、治人さんは一旦口をつぐんだ。
二人でエレベーターに乗り込むと、ボタンを押す。
エレベーターは直ぐ二階に到着し、扉から出るとあまり明るくない広い廊下は殺風景で、とても空気が冷たかった。
手術室の大きなドアの手前に備え付けられた椅子に二人で並んで座ると、治人さんは思いきったように話し出した。
「相澤とはね、スイスの大学で一緒だったんだ。二年後輩だったけど、彼はいつも輪の中心にいて人気者だった。眩しかったなあ。僕に無いものを沢山持っている相澤がいつも羨ましかったよ」
そう語る治人さんの眼差しは柔らかくて、私は食い入るように彼を見つめた。
「だからあの写真を見たとき、僕はどうしようもなく狂ってしまった。何もかも持っているのに、僕からマヒルを奪っていくのかと思ったら、もう、自分を律することが出来なくて……。あの時冷静に、君の話を聞いていたらと後悔したよ」
いつも思ってた。あの日に戻れたらって。いや、あの日だけじゃない。僕は君を」
そこまで言って、治人さんは一旦口をつぐんだ。
二人でエレベーターに乗り込むと、ボタンを押す。
エレベーターは直ぐ二階に到着し、扉から出るとあまり明るくない広い廊下は殺風景で、とても空気が冷たかった。
手術室の大きなドアの手前に備え付けられた椅子に二人で並んで座ると、治人さんは思いきったように話し出した。
「相澤とはね、スイスの大学で一緒だったんだ。二年後輩だったけど、彼はいつも輪の中心にいて人気者だった。眩しかったなあ。僕に無いものを沢山持っている相澤がいつも羨ましかったよ」
そう語る治人さんの眼差しは柔らかくて、私は食い入るように彼を見つめた。
「だからあの写真を見たとき、僕はどうしようもなく狂ってしまった。何もかも持っているのに、僕からマヒルを奪っていくのかと思ったら、もう、自分を律することが出来なくて……。あの時冷静に、君の話を聞いていたらと後悔したよ」