First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
私は乾いた笑い声を辺りに響かせて、でもね、と続けた。

「シンデレラが救われたのはきっと信じ続けて努力してきたからだと思うんだ。誰かに愛されたい、だからずっと辛いことにも耐えられた。私はそんなに芯が強くないけど、愛する人を信じられる人でありたいと思ってる」

「なら…!!」

私は首を振った。

「でも私はシンデレラと置かれた状況が違うんだよ。ハルは間違いなく、私のお姉ちゃんの婚約者なの。私はお姉ちゃんには勝てないよ」

ふぅっと大きなため息をつくと、私は無理やり笑顔を作って、

「それに私、短い間だったけど、ハルに愛されて幸せだった。そばにいられるだけでこんなにも幸せを感じられる恋なんて今までしたことがなかったよ」

紅の大きな目からクリスタルのような涙の雫がこぼれた。

「なんで、なんでいろはばっかり苦しまなくちゃいけないの?!私、井上先生の中途半端な態度が許せないよ…っ」

「そんなこと言わないで、紅。紅の気持ちは嬉しいけど、私はもう疲れちゃったんだ。実らない恋に、もう未来なんてないよ」

春雪と初めて出逢った12のとき。

周りの世界が色をなくして見えた。

希望の光も、愛されることも知らなかった。
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