First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
誰かに愛されたくて、すがって、追いかけて。

そんなときに私は春雪に出会った。

愛されたことのない私。
愛する人を失った春雪。
もしかすると、ただの傷のなめあいを愛だと勘違いしていたのかもしれない。

でも、それともいいと私は思う。

一度相手を見失って、ずっと会えることを待ち望んで。

やっと再び春雪に出会えた。

初めて二人で出かけたお墓参り。

春雪が秘密を打ち明けてくれた。

二人の初めてのキス。

すごくドキドキした。

でもそのひとつひとつが今は愛おしく想う。

幸せだったなぁ、と思う。

だから私は静かに春雪を忘れようと思う。

春に降る雪のように、静かに…。


私が空を仰いでいると、背中に誰かが飛びついてきた。

驚いて振り返る。

「いろはぁ…」

泣いてメイクがぐちゃぐちゃになった紅が私の小さな体を抱きしめていた。

「こんなにちっちゃい体でそんなにいっぱい悩んで苦しんで。私、すごく悔しいよ」

私は目が次第に潤んでくるのに気づいた。

目の周りに涙の膜が張る。

泣きたいなら、泣いてもいいんだよ。

紅は優しく言ってくれた。

私は紅の腕の中で泣いた。
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