First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S4 夏の桜

夜の空に月が浮かんでいた。

まるで目玉焼きがそのまま空に浮かんでいるようだった。

「お腹すいたー!!月見バーガーが食べたいっっ」

紅が叫んだ。

私は苦笑しながら、紅にコーヒー味のキャンディーを差し出した。

紅は受け取ると、包みをきれいにはがして、口の中に飴玉を放り込んだ。
「にっがーい!!」

私はくすくす笑いながら手に提げた紙袋の紐を強く握り締めた。

私も自分の分のキャンディーを鞄の中から取り出し、口に放り込む。

苦いけれど、刺激的な味が私の頭を冴えさせていく。


放課後、春雪の残した手紙を拾った私は、泣きながら何度も何度も繰り返し手紙を読んだ。

ハル、ハル、ハル…!

屋上の手すりにつかまりながら、私はしゃがみこんで泣いた。

ハルのこと、信じてあげられなくて本当にごめんね。

私は何にも知らなくて、ずっとハルに飽きられてしまったのだと思ってた。

だから全てを諦める覚悟で、もう携帯電話のアドレス帳からメールアドレスも番号も消去しようとしていたくらいだ。

でも本当は違ったんだね。

ハルは私を守るためにお姉ちゃんを抱いた。
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