First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
私が差し出したおにぎりを見て、紅は目を丸くし、

「いろは、いろはの鞄ってドラえもんのポケットみたいに異次元につながってんじゃないの?!何でも入ってんのー」

私は鼻の下を指でこすり、えへへへっ、と笑うと、

「七味唐辛子とかも入ってるよ」

「はぁ?何のため??」
「学食のおうどんにかけるため」

紅は目を丸くしたまま、私の差し出したおにぎりにかぶりついた。


「ねぇ、紅」

「うん」

「本で読んだんだけど、ドラえもんて案外近い将来実現するかもしれない可能性があるんだって」
「マジで?」

「うん、理論的にはたくさんの科学者に証明されていて、あとは現実の科学技術が追いつくかどうか、って言ってもおかしくないんだって」

「へぇー、すごいね」

「もしドラえもんができたら、紅はどうする」

「どうするかなぁ、とりあえず、いろんな道具を試してみたい」

「あははは、現実的だね」

「いろはは」

「時間を戻したい。もう一度、ハルに一から出会いなおしたい」

「…そっか、そうだよね」

私たちは木の枝から足をぶらつかせながら、ずっと話していた。


翌朝。

私たちが家に帰ったのは、朝の4時半だった。
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