First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
「でもクマできてるよ」
「それは若くても寝不足すればクマぐらいできますよ」

私たちはしゃべりながら歩いていると、校庭の一角がざわついているのが目に飛び込んできた。

視線をそちらに移す。

生徒や、教師、みんな息を飲んでそれを見ていた。


「きれい…」


紅が思わずつぶやく。

それは私と紅が徹夜して、桜の枝につけた色とりどりのリボンだった。

暗がりではあまりよくわからなかったけれど、こうして明るいところで見ると、なかなかのものだった。

「なんだか、自分たちがやったこととは思えないね」

生徒の中には携帯で写真を撮っている生徒もいた。

そして、人ごみの中に、私は春雪の姿を見つけた。

春雪はただ、黙って桜の木を見つめていた。


ハル、これが私の答えだよ。

ずっと、ずっとそばにいたいから。

ずっと、ずっとよろしくね。

たとえ、家族を捨ててでも、私はあなたから離れない。

だから、この気持ちを受け取って。


私が紅と桜の木から少し離れたところから眺めていると、春雪が振り返った。

そして視線が私たちを捉えると、柔らかく微笑んでから口を動かした。

「夏の桜みたいだ」
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